ご挨拶

 弊社は職人であった創業者・遠藤元正が、科学技術探求のために尽力されていた研究者の皆様のお役に立ちたい一心から私財を投げ打ってまで努力し築き上げた、いわば血と汗と涙の結晶ともいえる企業体です。最近では儲けるが勝ち的な安易な風潮が世に蔓延しつつありますが、弊社はこの愚直ともいえる発祥以来、その存在意義を確実に高め、その拠り処とする企業哲学を熟成させて参りました。「与えよ、されば授からむ」との滅私奉公的精神が人を惹きつけ物を産み、少なくとも独立独歩出来るだけの力を得るまでに至らしめたことは、世に天命なるものが存在する証なのかもしれません。

 さて、科学技術の発展には目を見張るものがあります。巨大核融合実験炉は人工太陽を創り出すでしょうし、一方でいわゆるナノテクノロジーは原子分子レベルの観察からその操作を可能にするレベルに至りつつあります。クローン生物に止まらず、人類は神の領域を犯さんばかりに知的好奇心を発展させて参りました。

 然るに、我々人類の精神は残念ながら進歩していません。局所的、偏在的な科学技術の発展は人間社会や地球生態系に於ける不均衡を増長しているだけなのかもしれない。人類にとって一番重要なものは太陽や地球といった我々を育む自然界であることは疑う余地が無いのにもかかわらず、我々には一体何ができるのでしょう、出来ているのでしょう。

 我々の会社はいわば人間を磨くための道場です。感性を研ぎ澄ませて自分を磨き、自身や会社や国や人類の天命を絶えず模索する。その中で確実に我々の道を照らしてくれるであろう科学技術、それも「世界平和の為に貢献し得る科学技術」を発展させるための努力をする。大層なことのようですが、実は誰にでも出来ることがあるはずです。弊社では「モノづくり」を通じてこれらへの貢献を考え、実践を続けます。

 但し、奇麗事だけでパンが得られるほど世の中は甘くありません。貢献に見合った代償を世に問い求めながら、弊社は来るべき100周年を先ずは次の道標に、正々堂々と歩んでいく所存です。今後とも引き続きのご指導ご鞭撻、そしてご愛顧を切にお願いし、ご挨拶とさせていただきます。

株式会社トヤマ 代表取締役社長
遠藤克己