ダイヤモンド状炭素(DLC)膜は、ダイヤモンドに近い物性を持ち、耐摩耗性・潤滑性などに優れることから、ハードディスク (HDD)、機械工具、及び自動車などの摺動部品に用いられています。DLC膜は水素を含む膜と含まない膜に分かれ、特性を特徴づける一つパラメータとしてダイヤモンド構造(Dバンド)とグラファイト構造(Gバンド)の比があります。
スパッタ成膜であるNFTS法では水素フリーのDLCを成膜が可能ですが、通常のスパッタ膜に比べて下図に示すようにDバンドの比率の高いDLC膜を成膜することができます。なお、NFTSでのDLC膜は、通常のスパッタ成膜によりできるDLC膜と同程度(20 nm/min)の堆積レートが得られています。NFTS法によるDLC膜のDバンドの比率の高い理由として、NFTSのプラズマボックス内に飛散するC原子は、高いエネルギーに保たれつつイオン化が生じるためと推測されます。