Cu配線としてビアホールへのCuの埋め込みとして電解メッキ法が採用されており、メッキのシード層としてスパッタ法やCVD法によるCu薄膜形成技術が提案されています。しかし、CVD法ではコンタミの混入による導電性の低下等の膜質低下が懸念されます。LSIでの配線には超薄膜で溝界面を乱すことの無いシード層形成技術が必要と思われます。従って、これらの分野でもNFTS法の有用性が期待されています。実験はNFTS特有の箱型空間で生じるCu+イオンによる高真空スパッタの効果、及び基板界面でのセルフバイアスによるスパッタ粒子拡散によるホール内面への被覆特性を明らかにすることを目的として行われ、プラズマ密度を高めるために直流電源に13.56 MHzの高周波電源を重畳させてArガス圧 7 mPaでホール底径 500 nm、深さ 1300 nmのホール内面へCu膜のスパッタを試みました。
SiO2からなる溝に堆積したCu薄膜を断面SEM観察しました(下図)。表面堆積膜厚が600 nmの場合、底部の膜厚は60 nm、側壁への堆積は底部の 60 nm から上部の突出し部 200 nmの連続膜形成が得られました。破断SEM像から堆積表面に球面状の粒界の成長が観察されます。底部での堆積表面には 20 nm径、上部側壁には 100 nm径に成長した粒界が観察されます。なお、溝に堆積したCu薄膜は粒界が観察されない緻密な層となっています。メッキのシード層としては 5 nm程度の連続層がホール内壁及び低部に均一に形成されていればシード層として充分と考えられます。従って、下図に示した膜厚の1/10以下の堆積ではホール上部での突出し部は無視できる程度に均一な薄膜形成を低温で形成できることになり、特に底部における中央部の盛上りの無い平坦なシード層の形成ができるためメッキでの均一な平坦性に優れた埋め込みによる低抵抗の成膜が期待されます。